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熊本地震のデータ「不自然」 阪大「捏造かも含め調査」。詳細はスラドの記事及びコメントが有用。あの地震では4月14日に M6.5 の地震があり、これが本震だろうと思っていたら2日後の4月16日に M7.3 の地震が起きた。問題の論文で、阪大の秦吉弥准教授らは14日の地震の後で益城町に臨時の地震計を3基設置しました、そしたら2日後に M7.3 が発生し、タイミング良く貴重なデータを取ることができましたという結果を報告している。ところが彼らの臨時地震計から 1km 弱離れた所には、防災科研が設置した強震観測網 (KiK-net) の地震計が以前からあった。この地震計のデータは公開されている。秦准教授らの臨時地震計のデータはなぜかこの KiK-net の地震計の観測データと妙な相関があるという匿名の指摘が土木学会の地震工学委員長宛にあったらしい。両者の波形のフーリエスペクトルはそのままでは大して似ていないようにも見えるが、フーリエスペクトルの比をとると、東西成分と南北成分でスペクトル比の形がほぼ一致している。同じ町内とはいえ 1km 離れた2地点で地盤の応答の仕方も地震計の特性も違うはず、なのにこんなに一致するものなのか? 自分達の臨時地震計で取ったデータというのは嘘で、KiK-net のデータを加工して使ったのではないか? という疑惑。

2地点で観測した波形のフーリエスペクトル比が東西成分と南北成分でどのくらい似るものなのかというのは素人の俺には分からんが、新潟県中越地震での例があった。リンク先 PDF の図 3.17 (a) がそれ。小千谷市内にある気象庁 (JMA) と防災科研 K-NET の地震計(1km弱離れている)の波形のスペクトル比をとって、東西成分・南北成分・上下成分についてグラフに表している。今回のケースとよく似ていて比べやすい。これを見れば、2地点のスペクトル比が東西動と南北動であんなに一致するなどありえないことが分かる。

天文や地球科学での研究不正はあまり聞いたことがないと思っていたが、こういうのを見ると、追試や検証がしづらいから明るみに出ていないだけで実はいろいろ埋もれているのかもしれんという気になる。