“ニホニウム”に見る自然科学の意義と意味。松浦晋也さんの記事。「ビジネス社会においては正しいこととされる「選択と集中」は、自然科学では人間の自然に対する敗北宣言に等しい」。ツタヤ図書館ではなぜダメなのか、とかもまあ結局同じ話。

なぜ超重元素を合成するのかという問いに対するわりと具体的な答として、「安定の島」が実在するかどうかを確かめる、という話もあるはず。なぜか今回あまり解説を見かけない。

原子番号がウランを超えて100番とか110番台とかになってくると、陽子同士のクーロン斥力の寄与が大きくなってきて原子核は形を保てず、秒やミリ秒という時間尺度ですぐに軽い元素に崩壊してしまう。うたかたの元素であります。ただし陽子数 Z や中性子数 N が特定の数のときには例外的に核がすごく安定するという性質があり、こういう核子数 (2, 8, 20, 28, 50, 82, 126, ...) を「魔法数」と呼ぶ。スズ (Z=50) や鉛 (Z=82) に安定同位体がたくさんあるのは陽子数が魔法数だから、とよく言われる。だとすると、例えば原子番号126番の元素 Ubh は(まだ合成すらされていないけれども)、寿命が数日とか数年とか数十年とか、我々がいろいろ観察できる程度には長いかもしれない、もし運良くウラン並みに半減期が長ければ、過去の超新星爆発でその元素が合成され、その元素を含む星間物質から我々の太陽系が作られ、地球上のどっかの岩石の中に今でも含まれていて、未知の新元素として発見される日を待っているのかも知れない、などという夢が広がりんぐなわけである。実際にはいろんな効果があって超重核の魔法数は上の数字とは少しずれるらしく、今のところは Z=110±5, N=180±5 あたりに長寿命の原子核が離れ小島のように現れるのではという予想があり、これを「安定の島」仮説と呼ぶ。理研森田チームが合成したニホニウム278は Z=113, N=165 なので安定の島には乗っておらず、平均寿命は2ミリ秒。(これは半減期ではなく、観測できた3例の崩壊までの時間の平均値が2ミリ秒という意味。)