Perfume は渋谷で最も高いセルリアンタワーの屋上ヘリポートから『TOKYO GIRL』。寒そう。しかし風になびく髪が逆光で照らされて綺麗だった。

TOKYO GIRL

曲の後半は実際の夜景に CG が合成されて、サーチライトやビルの明かりが曲に合わせて動く趣向。しかも生で! 「LIVE」表示が消えていたが、前景は別撮りではなく屋上の生映像のままだったと思う(そうでなければわざわざライゾマがやる意味がない)。どういう仕掛けなのか分からないが、グリーンバックを使わずにリアルタイムで前景と背景を分離する技術が使われてるのは確か。動きが大きいときに人物の輪郭を見ると何となく分かる。

TOKYO GIRL

これは過去にさんざんやった人体プロジェクションマッピングでも必要な要素技術なので、ライゾマ的には枯れた技術なのかもしれないが、輪郭抽出の精度がかなり良くなっている印象。どうやっているのか不思議。人間だけなら赤外線映像かなとも思うが、屋上の縁も抽出できてるしなぁ。

サーチライトやビル群の明かりは、カメラの動きと画角をあからじめ決めておいて CG を作り、本番のカメラをその通りに動かして生の実写に重ねる、とすれば可能。…なのだが、光線がビルの後ろに隠れる所もちゃんと描けているのが地味に凄い。ただの重ね描きではなくちゃんと隠線処理されているわけです。カメラは動いてるしサーチライトも動いてる中でここまでやっている。どうやってるのかこれも謎。渋谷の建物の 3D データを使っているのかもしれないが、そんなものあるのか? Google Maps では 3D 表示できるので、Google さんかゼンリンさんに言えばそのへんのデータが使えるのだろうか。

サーチライトの隠線処理

そしてヘリからの空撮映像にも CG 合成。これは生映像ベースじゃないのかもしれないが、生だとすればこれもどうやっているのか謎。空撮カメラの写野が動きながらサーチライトも自然に動いていて、光線の根本は地面に対して動いていない。いかにも現実に地面から光線が発射されているかのよう。空撮カメラの3次元座標や画角をリアルタイムで取得して CG を生成しているのか? しかもここでも、大きなビル(渋谷ヒカリエ)の向こうを通る光線がちゃんと隠線処理されている。不思議。

サーチライトの隠線処理

ということで、ついサラッと流して見てしまうが、生放送の映像として考えると今年もなかなか凄い技術が使われていた気がする。

紅白の Perfume は2015年(実写と 3DCG のリアルタイムスイッチング)・2016年(アナモルフォーシスを使ったリアルタイム背景生成)ともにテレビカメラありきの映像演出で、あれだと NHK ホールで生で観ている人は(モニターがあるとはいえ)面白くないよな、今年はどうするんだろというのが懸念だったが、今回は Perfume 自体がロケに出ることで「生で観る客」をなくしてしまうという逆転の発想で問題を解決したんだなと気づいた。凄いというか、ショービジネスでそれをやっちゃうのかという驚きがある。考えてみれば、Perfume は初期の口パク論争からここまでずっと、「生」の価値って一体何なんだ、「生」でなければ感動は生まれないのか、「生」と「生じゃないもの」の線引きはどこにあるのか、みたいな所に絶えず問いをぶっ込み続けて10年生き残ってきた。チーム Perfume の人々がことさらに「生/非生」という問題意識だけで動いているわけでもないと思うが、結果的にそういう道を歩んできてしまったのは面白い。