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アメリカのヒーロー、ジョン・グレン宇宙飛行士が"ヒーロー"と呼んだ最愛の人 | sorae.jp。1年前の記事。奥さんとのエピソードといい、『ドリーム』での描かれ方といい、ジョン・グレンは何ていい人なんだ、とこれらだけを見ると思うが、印象の異なる話もある。
マーキュリー計画当時、NASA の医学者に Randy Lovelace という人がいて、マーキュリー計画の宇宙飛行士選抜プログラムと同じテストをもし女性にも課したら、一体何人くらいが合格するだろう、と考えた。女性は男性より小柄で軽いので狭い宇宙船に搭乗するにはむしろ向いているのでは、という考えが根底にあったようだ。そこで彼は自分の私的研究としてこの選抜試験を行うプロジェクトを立ち上げ、女性パイロットを募集した。当時の米国にはこういうことができるくらい女性の飛行機乗りがたくさんいたんですね。まあ広い国だしね。これに参加した女性達は First Lady Astronaut Trainees (FLAT) と呼ばれ、結果的に13名の女性が男性宇宙飛行士と同じテストをパスした。シェパードやグレンなど、マーキュリー計画の7名の宇宙飛行士を "Mercury 7" と呼ぶが、FLAT で全ての選抜試験に合格した13名の女性達はこれになぞらえて "Mercury 13" と呼ばれた。中でも Jerrie Cobb という女性は男性宇宙飛行士候補全員と比べても上位2%に入るほど優秀な結果を残した。
このような目覚ましい成果が出るとやはり実際に宇宙へ行きたくなるのは当然で、FLAT の13名の女性達は自分達もマーキュリー計画の宇宙飛行士として宇宙に行けるように NASA に働きかけたが、いやー FLAT は NASA の正式なプロジェクトじゃなく Lovelace 博士が勝手にやったことですし、ということで彼女達が宇宙飛行士として認められることはなかった。この問題については議会の公聴会も開かれ、米国初の地球周回飛行を成し遂げた男にして当時 JFK に次ぐアメリカンヒーローとなっていたジョン・グレンも証言台に立った。ここで彼は、「宇宙飛行士の世界に女性がいないという事実は我々の社会秩序の事実です。望ましいことではないかもしれませんが」というようなクッソ消極的な発言をして、宇宙飛行士に女性が加わること、FLAT を NASA 公式プロジェクトにして国費を入れることに反対した。もしグレンほどの影響力を持つ人物が支持していればこの時点で米国初の女性宇宙飛行士が誕生していたかもしれないが、彼はそれを望まなかった。ソ連ではガガーリンからわずか2年後の1963年にワレンチナ・テレシコワが宇宙飛行を行ったが、米国で女性が宇宙へ行くのは結局、1983年にスペースシャトル・チャレンジャーに乗ったサリー・ライド飛行士まで待たねばならなかった。
何だろうな、性別にかかわらず能力のある人が能力に見合った活躍をすべきなどと言いながらも、実際に自分と対等な存在として自分の縄張りに女性が進出することは認められなかったってことなのかな。良妻賢母だったり男が守るべきか弱き存在でいてくれる女性には優しいとか、自分と無関係な領域で活躍する女性に対しては理解がある、みたいな「条件付き」の理解者だったのかね。今の感覚では随分なマッチョ思考に見えるが、まぁ1960年代だしね。知らんけど。
以下参考文献。Jerrie Cobb と FLAT の話も映画化希望。