毎朝『ZIP!』でスカイツリーのライブカメラ映像や「日の出 TIME」コーナーを見ていると、日の出時刻が毎日遅くなっていくのがよく分かる。冬至を過ぎたのになかなか日の出が早くならないね、と母が言うので、日の出時刻は1月7日あたりが一番遅いという話をした。「あーそうなの? 道理でそんな気がしてたわ」とのこと。「冬至」と「日の出が最も遅い日」「日の入りが最も早い日」の違いについてはこの tweet の図が分かりやすい。ステラナビゲータの「出没表」機能でも同じような図を描けるが、縦横軸の範囲をカスタマイズできないのが辛い。

なぜ冬至と「日の出が最も遅い日」がずれるのかはスカッと説明された例をあまり見たことがないが、短く言えば「均時差があるから」ということになる(スカッとしてない説明)。もう少し字数を使うと「日の出時刻でのアナレンマが寝ているから」ということになろうかと思われる。東京の朝7時のアナレンマを描くと下図のようになる。(標高は 0m、大気差による浮き上がりは入ってないシミュレーション)

東京朝7時のアナレンマ

太陽は冬至に天の赤道(赤線)から最も南に離れる。つまりアナレンマの8の字の底に太陽が来るが、日の出頃のアナレンマは斜めに寝ているので、アナレンマの地平高度が一番低い点(=日の出が一番遅い日)は8の字の底ではなく、それより2週間ほど経った1月7日あたりになる。だから冬至と「日の出が最も遅い日」はずれる。以上。

もし地軸に傾きがなければ、太陽は常に天の赤道上にあって季節は生じない。地軸が傾いているせいで太陽が天の赤道より高くなったり低くなったりする。これがアナレンマの縦方向の動きの原因。しかしそれだけなら8の字にはならず、夏至と冬至を結ぶ直線上を行き来するだけになるはず。アナレンマに幅方向の膨らみが生じるのは、

の二つの寄与による。この二つの効果を合わせた太陽の進み遅れのことを均時差という。(A) による進み遅れをイメージするのは難しいが、春分・夏至・秋分・冬至にゼロになり、それらの中間の日で最小/最大になる。(B) による進み遅れは、地球の近日点(1月初め)と遠日点(7月初め)にゼロになり、その中間で最小/最大になる。(A) と (B) の寄与は同じくらいの大きさなので、両方を合わせた最終的な均時差は1年間で二こぶの山・谷を持つ変動となる。これがアナレンマに幅方向の膨らみを生じ、8の字運動になる。

というわけで、アナレンマが寝ているせいで冬至と「日の出が最も遅い日」がずれるのなら、天の赤道が垂直に突っ立っている赤道直下に行けばこのずれはもっと大きくなるはず。ということで、緯度0度での朝6時のアナレンマを描いたのが下図。

緯度0度、朝6時のアナレンマ

赤道直下では朝のアナレンマは完全に横倒しになるため、日の出が一番遅いのは北半球の冬至よりだいぶ後の2月12日頃になる。しかも、2月からだんだん日の出が早くなり、5月中旬にいったんピークを迎えた後でまた日の出が遅くなり、7月末に「一年で2番目に日の出が遅い日」が来てからまた早まっていき、11月初めに「一年で日の出が最も早い日」が来るという複雑な経過をたどる。

逆に高緯度地方に行けば朝のアナレンマが立ってくるので、アナレンマの最低点が8の字の底(冬至)に近づき、冬至と「日の出が最も遅い日」のずれは減る。北緯60度での朝9時のアナレンマの例。この緯度で日の出が最も遅い日は12月27日くらいになり、冬至とのずれは4日程度になる。

北緯60度、朝9時のアナレンマ

さらに北極点まで行けば地平線と天の赤道が完全に重なるため、どの時刻でもアナレンマが完全に直立するが、夏は白夜、冬は極夜になってどちらも「日の出」がなくなるので、冬至と「日の出が最も遅い日」のずれを考えるのは意味がなくなる。太陽高度が最も高い正午でも、アナレンマの下半分が地平線下に埋まったままになる。

北極点、正午のアナレンマ