スプートニク1号のイラスト | かわいいフリー素材集 いらすとや

2015年の『天文月報』に載った古在さんのインタビューを興味深く読んだ。

古在さんが「左翼の家系」だとして台長への就任を陰で反対された話とか、文部省内部でブラックリストに載っていたという話もあり。しかもその理由が、竹内峯さんが共産党の雑誌で古在さんの著書の書評を書いたせいだとか。人間は不安になると、手っ取り早く不安を解消するためにレッテル貼りをして安心しようとする。

古在さんの世界的業績の一つとして挙げられる軸対称な地球重力ポテンシャルの下での人工衛星の軌道理論 (Kozai,Y., Astronomical Journal, 64, 367, 1959) について、Wikipedia や国立天文台の訃報記事や『天声人語』で「コザイの式」という呼び名が出てくるのだが、具体的にどの式がそのように呼ばれたと主張しているのかが不明で少し気持ち悪い。わざわざ片仮名で書くのも謎。マクスウェル方程式やアインシュタイン方程式などと同じように、海外で Kozai['s] (formula|equation) と呼ばれる特定の方程式が何かしら存在するかのようなニュアンスだが、それはちょっと違うのではと思う。いや、天体力学は門外漢なので知らんけど。上記の『天文月報』のインタビューでは「コザイの式」という呼び方は出てこない。講談社の『日本人名大辞典』にそのような記述があるっぽいのでこれがネタ元だろうか。小惑星の「古在機構」に関しては何をそう呼ぶかについて明確なコンセンサスがあるので気持ち悪さは感じないのだが。

"Kozai's formula" / "Kozai's equation" / "Kozai formula" / "Kozai equation" で検索すると人工衛星の運動に関する'60年代の論文が数件ヒットするが、あくまでも数件であって人口に膾炙しているとはあまり思えない。検索結果を個別に見ていくと、古在論文の p.372 に登場する \({\overline{n}}^{2} {\overline{a}}^{3} \) の式 (14) か、またはその上の行にある \(\overline{n}\) の式や \(\overline{a}\) の式が "Kozai's formula" などと呼ばれて引用されているようだ。